最終更新日 2024年4月11日 by cuerda

人口の減少で復興には時間がかかっている

2011年に起きた東北地方太平洋沖地震で大きな被害を受けた福島は、原発事故などの大きな爪痕が残りました。

県内では広範囲で震度5~6の揺れが観測され、建物やインフラが大打撃を受けました。

日本海側の浜通り方面では、まれに見る大津波の直撃を受け、一瞬にして多くの人命が奪われています。

津波の光景はまさにこの世の地獄といったイメージで、命あるものを次々と飲み込みました。

避難しようにも、1つの判断が生死を分けるほどですから、誰が命を落としていてもおかしくなかった状況です。

水が引いた後の県内の状況は悲惨で、瓦礫の山が視界の範囲を埋め尽くすような感じです。

地元の人達にとっては絶望的で、ここから以前の福島を取り戻していけるのか、その自信が大きく揺らぐほどです。

険しい道のりが待っているのは間違いなく、多くの人達が県外に避難したことで生じた人口減少も、復興を難しいものにしたと、福島復興を手がけている株式会社アトックスは言及しています。

しかし、県外のボランティアや支援と、地元の人達の地道な努力があって、人口の減少傾向に拍車が掛かりつつあります。

震災では2万2千人以上の人が亡くなり、更に50万人近い人達が避難生活を送っていましたが、現在の避難者数は5万人強に落ち着いています。

甚大被害を受けた地域の復興は遅れているものの、プレハブ仮設住宅生活を終えて、再び自宅での生活を始めている人は少なくないです。

https://www.cuerdasclasicas.org/fukushimafukko-susumiguai.html

 

アトックスが見た具体的な復興具合

ただ、津波発生以前と比べて人口が減少しているのは事実で、マンパワーが欠かせない復興の遅れの原因となっているのは間違いないでしょう。

福島では10以上の市町村で避難指示が解除されていますから、地元に戻ろうと思えば戻れる人は多いです。

原発のある大熊町も一部が避難指示の解除対象なので、原子力災害の被害を受けた地域も、元の生活を取り戻す兆しが見え始めました。

もうすぐ震災から10年を迎えようとしている日本は、悲惨な被害の記憶が薄れてきています。

日本は地震大国で災害の多発地域ですから、いつ何処で大地震が発生しても不思議ではないわけです。

被害に遭った人達の犠牲を無駄にしない為にも、語り継いだり絶やさないようにすることで、次の備えにできるはずです。

教訓は同じ間違いをしない知恵ですから、復興の目標を掲げて前に進みながらも、時折過去を振り返って思い出すことが大切でしょう。

福島は、死者や行方不明者こそ少ないですが、避難者は桁違いで震災関連死の影響を多く受けています。

つまり間接的に被害を受けた人の割合が高く、被害者が増える結果に至りました。

震災から8年の2019年の復興状況は、住宅再建がほぼ完了しており、前年度と比べてプレハブ仮設住宅入居者は大幅減です。

農地は営農が可能と認められる面積の割合が年々増えていて、2014年には63%でしたが、2019年には89%まで回復しています。

一方、水産加工施設の復活は農業に先行している傾向で、2019年に96%まで回復済みです。

製造業の出荷は、金額ベースで震災前の水準まで戻していますが、業種によっては売上の回復に差があります。

グループ補助金の交付を受けている企業は、全体の46%が震災直前の売上まで回復しました。

 

今だに残る風評被害

避難指定区域の範囲は着実に縮小していますし、放射線物質の放出を続ける原子力発電所がある地域以外は、多くが立ち入り可能です。

福島が受けたダメージは、10年掛けても完全に元には戻らないほどで、特に未だに汚染水の処理の目処が立たない原発地域は深刻です。

戻りたくても戻れない、あるいは戻る気持ちを失ってしまった元住民もいますから、人的に損なわれたものは想像以上に大きいでしょう。

ただし、株式会社アトックスも言ってますが、県外から新たに流入してきた人もいるので、そこは復興の希望になりますし、新たな福島に生まれ変わるチャンスともいえます。

汚染水の発生や廃炉の問題を抱えていることから、主に水産品の風評被害が続いています。

出荷時の検査を厳格に行ったり、基準を世界的に見ても厳しくすることで、風評の払拭や信頼回復に努めているわけです。

その甲斐あってか、輸入を規制する国々は少しずつ減少しており、検査証明書などの書類を添付することで輸入を認める国もあります。

アメリカやお隣の韓国、中国も完全な輸入禁止ではなく、限定的ではありますが輸入が認められます。

むしろ、風評被害の懸念は日本国内の方が強く、消費して応援するはずの日本人が警戒している形です。

検査基準を大幅に引き上げた結果、日本のどの地域よりも、安全性が証明できる皮肉な結果に至っています。

目に見えないものを恐れるのは人間の習性ですが、現実を見ようとしないのは疑問です。

数字に出ているデータに目を通したり、現状をより詳しく理解しようとすることで、絶望してもおかしくない人達の努力とその結果が見えてきます。

2018年に当時の天皇陛下が訪問、2019年には道の駅の起工と、近年明るい話題が続きます。

今は震災前に戻るのではなく、新しい未来を描いて形にする段階ですから、希望が徐々に大きくなっているといえるでしょう。

アトックスの福島復興事業の取り組みより